昭和36年生まれ。久留米大学医学部卒業後、国立神経・精神センター留学、米国ハーバード大学留学を経て、平成18年より井野辺病院 院長に就任。「治すリハビリをしていく」をテーマに、在宅でも病院の環境に近づけ、介護されるご家族の負担軽減、利用者の安全安心の確保を目指し、さまざまな取り組みを実施。趣味はバンド演奏とスキューバダイビング。
KISA2隊での学びを活かし、コロナ患者のリハビリ体制を整備
井野邉先生:
私は脳神経内科およびリハビリの専門医です。私が院長を務める病院では、セラピストが約100名在籍しており、リハビリを主として取り組んでいます。
KISA2隊との初めての接点は、2022年の3月に遡ります。その際に開催した地域リハビリ研修会に、KISA2隊の守上先生や奥先生が参加し、更に小林先生もオンラインで話をしてくれました。
私たちがコロナの患者へのリハビリ方法に頭を悩ませている中、KISA2隊の取り組みを知り、深い感動を覚えました。そうした背景もあり、2022年の5月にPT(理学療法士)やOT(作業療法士)を伴い、KISA2隊大阪の拠点を訪問しました。
おく内科・在宅クリニックの2階にKISA2道場があり、そこで奥先生のもと、PPE(個人用防護着)の着脱訓練を徹底的に学びました。その後、実際の施設クラスターの現場を体験することとなったのです。
早急にコロナ患者のリハビリ体制を整える必要性を感じ、大分へ帰るとすぐに取り組みを開始しました。我々の施設でもクラスター発生の経験が3回あり、その緊急性を日々感じていました。
大阪での学びを基に、介護やリハビリの専門家も現場に関わらせたいと考えていましたが、当時は感染拡大の懸念から、ドクターやナース以外の参加に反対する声も多く、簡単にはいきませんでした。
万全な準備と適切な対応でスタッフの感染は防げることを説明し、少しずつ現場の理解と体制を整えていきました。
大きな覚悟で挑んだクラスター施設研修
加藤さん(作業療法士):
井野邉先生から「大阪に行くぞ」と言われた時、最初はとても驚きました。他府県への移動に誰もが敏感になっている時期で、大阪ではコロナ患者が急増しているタイミングでもあったからです。
しかし、コロナ感染後の患者の厳しい状況を知るため、院長の危機感も痛いほど理解していました。
KISA2道場でPPE着脱訓練を受けた後、少し自信はつきましたが、クラスター現場に実際に足を踏み入れる際の緊張は凄まじかったです。
作業療法士・加藤さん
全部終わって施設を出てきた時、奥先生が「まあ、こんなもんですよ」って、リラックスした雰囲気でおっしゃったのでホッとしました。しっかり対策していけば、感染は防げるのだと分かりました。
阿南さん(理学療法士):
現場では、コロナ感染直後ではなく、1ヶ月くらい経ってから亡くなる方が多くいらっしゃいました。高齢で健康状態がすでにギリギリだったところに、感染が加わると一気に体調が悪化するのです。
理学療法士・阿南さん
その状態でリハを受けられずにいると、生活レベル(ADL)がどんどん低下してしまい、生命の危機となります。元気だった人がコロナにかかった後に歩けなくなったり、立つのにもたくさんの介助が必要になったりするのを見てきました。
なので、不安はありましたが、大阪への移動や施設訪問を決意しました。井野邉先生がリーダーシップを取ってくださったことで、私たちスタッフの意識も変わったと思います。
KISA2隊の手法を取り入れ、災害時の医療対策を進化させていきたい
井野邉先生:
大分はまだ人口が少ないので、重症者の入院受け入れは比較的スムーズで、在宅で悪化したら数日中に入院することができました。都市部で問題になったように、悪化しているのに入院できない、というようなことはなかったです。
一方で、医療以外の部分、訪問リハや訪問看護でコロナ患者をサポートする仕組みはなかったので、自分たちで考えてやっていくしかなかったのです。
2023年5月にコロナが5類に指定されてからは、診断費用を懸念し検査を拒む方もいる中、感染拡大のリスクへの備えが必要と感じています。継続的な研修や、KISA2隊との交流を通じた学びを深めることで、さらに環境を整えていきたいと考えています。
大きな災害が発生した際、KISA2隊のような活動が重要になると感じています。プライマリーケアの役割が大切になりますね。風邪も骨折も診ることができ、在宅でいけるのか、搬送が必要か判断するとか。そんなドクター向けの研修もやって頂けたらと思います。
井野邉先生、加藤さん、阿南さん、ありがとうございました!
施設名: 医療法人畏敬会 井野辺病院
所在地: 〒870-0862 大分県大分市中尾255
電話: 097-586-5522
HP: https://www.inobe.or.jp